黒字経営が続いているのに倒産した会社は54.3%でした。(参照 : 帝国データバンク 全国企業「休廃業・解散」動向調査2022年)
会社の売上が好調でも、物価高騰や他社との競争が激化するなど先行きが不安で「あきらめ廃業」する会社も多い。取引先や従業員に迷惑をかけたくない理由で業績は黒字でも、倒産を選択してしまうのです。
そこで実際に私が勤めていた事業所が撤退した経験と、書籍を参考にして記事を書きました。
記事ポイント
- 見切りをつけた方がいい会社の特徴を10個
- 見切りをつけないまま会社を続けるとどうなる??
- 会社を辞めるタイミング
目次
見切りをつけた方がいい会社の特徴10選
労働時間が乱れている
組織行動学者のジェフリー・フェファー氏のメタ分析によると従業員に悪影響がある労働条件は、大きく分けて「時間の乱れ」と「職務の乱れ」の2つあると言われています。
まず「時間の乱れ」が多い職場の特徴は3つあります。
個人の価値観にもよりますが、この研究結果からは往復3時間の通勤で収入が高い人と、家の近くの工場で働く人の幸福度は変わらないのです。どちらの働き方にしても特に危険な働き方は、ワークライフバランスを崩すことです。
メタ分析によれば、「時間の乱れ」のなかでもっとも人体への害が大きかったのは「ワークライフバランスの崩壊」でした。プライベートに仕事を持ち込む働き方のことで、その悪影響は受動喫煙のダメージをはるかに上回ります。
鈴木 祐『科学的な適職』クロスメディア・パブリッシング 2019年より引用
休日に仕事の電話がきたり、休日出勤が当たり前の会社は、長期的に仕事を続けることが難しくなるのです。
職務環境が乱れている
メタ分析による研究で、「職務が乱れている会社」は悪影響があるとお伝えしました。職務が乱れている特徴は以下の4つです。
これらの特徴に3つ以上当てはまる場合、見切りをつけた方がいいでしょう。また転職する時も、この項目がクリアーになっているのかを、転職先の企業に聞いてみることが大切です。
社長が外部の人
社内の経営不振で外部の優秀な人を社長として招く会社は、成長しない可能性が高い。経済学で超有名な著書では、
飛躍を導くために外部から指導者を迎えて社内の大改革を行う必要があるとの見方には根拠がない。
引用元 : ジム・コリンズ『ビジョナリーカンパニー2』日経BP社 2001年 50Pより引用
この著書の調査では、成長しない企業は、外部から社長を招く企業が6倍高かったとされています。
日産自動車の元社長カルロス・ゴーン氏が内部告発されたように、外部からきた社長が経営している企業は早めに見切りをつけた方がいいでしょう。
優秀な人から辞めていく
優秀な人が辞めていく職場の特徴は以下の3つが考えられます。
- 優秀な人材を社内で異動させないよう上司がキャリアアップさせない
- 優秀な人と成果を出していない人の評価が同じ
- 優秀な人に仕事が集中しすぎている
優秀な人が実力を発揮できない職場なので、会社が成長することが難しくなります。自分が優秀であってもなくても、見切りをつけた方がいい会社です。
人間関係が悪い
人間関係が悪い職場は、健康に悪影響を及ぼすという研究結果が多数報告されています。
人間関係の悪化が健康におよぼす影響は計り知れず、そのダメージは長時間労働や福利厚生の不足の悪影響を上回ります。
鈴木 祐『科学的な適職』クロスメディア・パブリッシング 2019年より引用
さらに健康だけでなく、給料や仕事の成果にも悪影響があります。アメリカで500万人を対象にした調査では、以下のような報告があります。
職場に3人以上の友人がいる人は人生の満足度が96%も上がり、同時に自分の給料への満足度は2倍になる(実際にもらえる金額が変わらなくても、友人ができるだけで給料の魅力が上がる)
職場に最高の友人がいる場合は、仕事のモチベーションが7倍になり、作業スピードが上がる
鈴木 祐『科学的な適職』クロスメディア・パブリッシング 2019年より引用
実際に私が勤めていた会社では、人間関係が最悪で、喫煙所でタバコを吸わないと上司とまともに話ができない環境でした。健康より仕事を優先する人が多かったので、見切りをつけました。
自社の強みと弱みがわからない
ライバル会社に勝る強みがなく、価格競争だけで勝負している会社は、顧客に価値を生み出すことができない。反対に市場で負けていると分かっていながら退くことができない会社は赤字を垂れ流し倒産してしまう。
自分の会社の強さと弱さを熟知していない会社は、経営判断を間違えてしまうのです。
採用力がない会社
人手不足で優秀な人材を確保することが難しくなっている状況で、採用に力を入れない企業は倒産リスクがあります。採用力がない会社の特徴は、3つあります。
採用力がない会社の特徴
- 採用したい人物が不明確
- 自社の魅力を伝えられない
- 採用方法が1つしかない
これらの特徴に当てはまる会社は、ライバル企業に良い人材を奪われ市場競争に負けてしまう可能性があるのです。
不正の前兆がある会社
不正とは、商品開発や地道な営業活動など企業努力をしないで、楽をして稼ぐことです。
楽天モバイルに対し水増し請求をしていた「日本ロジスティック」が151億円の負債で倒産しています。その他にも食品工場で異物を入れるなど、会社のブランドを破壊してしまうような不正行為もあります。
このような会社は、信頼をなくすことはもちろん倒産するリスクがあります。そこで、15年間で3,200件の企業にインタビューした調査から不正する組織には以下の4つの特徴があることがわかりました。
不正する企業の特徴
- 戦略の明瞭性の欠落 : 経営者の高すぎる目標から従業員とのギャップが生まれ、架空の売上を作ってしまう
- 不公平な説明責任体制 : 仕事がどのように評価されているかわからない
- 不十分な組織カバナンス : 困難な問題に対して本音で話し合うことをしない
- 部門間のコラボレーション不足 : 他部門にライバル意識があり対立が解消されていない
これらの特徴がある会社は、不祥事が15倍も起きやすいことがわかっています。
不正しそうな人がいる会社
不正しそうな人がいる職場は、見切りをつけた方がいい。1人の不正行為がお客様の信頼を失い、会社を倒産の危機にしてしまうからです。
そこで、不正しそうな人の特徴は3つあります。
不正する人の特徴
- 不満やストレスを溜め込んでおり、愚痴が多くなっている
- 生活の不摂生(酒、ギャンブル、異性)で、お金に困っている
- 平然とルールを無視する人
このような特徴に当てはまる人が多い場合、不正行為が行われているかもしれません。不正はしていなくてもこのような人物は自分のことしか考えられないので、職場でトラブルに巻き込まれる可能性があります。
職場の危険人物への対処法は、下記の記事でまとめてありますので参考にしてみてくださいね。
仕事へのプレッシャーが多い
仕事のストレス要因を研究した結果、30項目ある中でトップ3位が仕事へのプレッシャーでした。
1位. 短期間で重要な意思決定をしなければいけないことがしばしば求められる(69.1%)
2位. 納期や期間に急がされる仕事である(65.0%)
3位. 予め決められたスケジュールは変えられない(59.9%)
参照 : 労働ストレス研究(労働者のストレス要因)
仕事に余裕がなければ、良いパフォーマンスを出せないどころか、仕事を効率化できるアイディアも思い浮かばない。仕事のプレッシャーが多い環境は以下の4点です。
- 仕事の優先順位を決めても仕事量が多すぎる
- 仕事のルールや納期を守ることが多い
- 仕事を断ることができない環境
- 責任感が重すぎる仕事
この特徴に当てはまる仕事をしているなら、見切りをつけた方がいい会社になります。
見切りをつけた方がいい会社を辞められない場合のリスク
会社が倒産する頃に行動しても手遅れ
会社が倒産する時に行動しても失敗する可能性があります。なぜなら会社が倒産するリスクよりも転職しない選択をしているので、「確証バイアス」になっている可能性があるからです。
「確証バイアス」とは、自分が選択をした業界や会社の良い情報ばかり集めてしまうことです。
例えば、倒産しそうな事実を捻じ曲げて「他の会社は潰れても、私がいる会社は生き残ることができる」という根拠がないことに気づかないのです。
自分の会社が倒産する頃に転職活動をしても、給料が高いだけで、他の条件もいいはずだと思い込み会社を選んでしまいます。
たいていの人は「この仕事は良さそうだ」と思った直後から思考が狭まり、それ以外の選択肢に目を向けられなくなってしまうのです。
鈴木 祐『科学的な適職』クロスメディア・パブリッシング 2019年より引用
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無力感になる
見切りをつけた方がいい会社なのに、自分には転職先が見つからないと思い込んでしまうと「学習性無力感」になる可能性があります。
学習性無力感とは「何をやっても無駄だ、頑張っても意味がない」と思ってしまうことです。この状態で仕事を続けてしまうと、今よりも良い条件で転職できるチャンスを逃してしまいます。
無力感になってしまう職場の特徴は「職場の空気の重さ」でわかります。仕事で無力感を感じるヤバい職場の特徴を、以下の記事にまとめていますのでチェックしてみてくださいね。
仕事でストレスがたまる
疲れてケガすればわかりやすいのですが、精神的なストレスは自分で気づかない場合が多い。
仕事のパフォーマンスが落ちるだけではなく、他人に迷惑をかけてもストレスで記憶が曖昧なので、トラブルの原因になります。精神に異常が出る前に、転職することをおすすめします。
自信を失う
向いていない仕事を続けてしまうと「向いてない仕事しかできない自分」を認めてしまうことになるので、自己効力感(自信)がなくなってきます。
自己効力感とは、
自己効力感が高いと目標に向かって努力ができて、達成する確率が高くなるとされています。反対に自己効力感が低いと、目標に対して努力しなくなり、無力感が現れます。
武器になるスキルが十分あるのに転職しないで現状維持をしてしまう。このような状態が続くと、今の仕事で出世することも、向いている仕事を探して転職することもできなくなってしまうのです。
貴重な時間が失われる
仕事を続けることで、お金以外の対価が増えていくことが会社に残るメリットの一つです。お金以外の対価を得ることで仕事へのやりがを感じることができるからです。
お金以外の対価とは、
- 人脈や職場の仲間が増える
- 資格やスキルが手に入る
- 社会貢献を実感できる
- 達成感が得られる
- 感謝される
これらの項目が一つも得られない会社は、多くの時間を無駄になります。
想像力が失われる
見切りをつけた方がいい会社にいると「想像することが浪費」だと考えるようになり、想像をすることをやめてしまいます。
想像力とは、新しい斬新的なアイディアだけではなく、相手の行動の先を読む想像力のことです。相手を思う想像力がなくなれば、相手に気を遣うことができなくなり信頼を失っていくのです。
キャリアが停滞する
見切りをつけた方がいいのにダラダラ仕事をして出世する人はいません。部下がついてこないですし、上司も出世させようとは思わないからです。
解雇されない限り仕事は続けられますが、年下の上司に使われて、職場で肩身が狭い思いをし、つまらない仕事を繰り返さなければいけなくなります。
見切りをつけた方がいいタイミンングとは!?
会社が変化しない時
見切りをつけた方がいいタイミングは「会社が変化していないと確信した時」です。
変化を恐れない会社は成長する可能性がありますが、世の中の流れに対して受け身な会社は沈んでしまうからです。
変化しない会社に残り続けると、自分も変化を恐れて学習性無力感になります。学習性無力感とは、「自分は何をやっても無駄だ」と無気力になってしまうことです。
この状況になってしまうと、転職することも、今の会社で成果を出すことができなくなってしまいます。何も変わらない会社にいる方は、下記の記事を参考に転職活動の準備をしましょう。
魅力的な会社を見つけた時
会社に見切りをつけたくても、転職先がなければ今の仕事を続けてしまう可能性が高い。以下のグラフは、内閣府の「転職したきっかけ」をまとめた資料になります。
参照 : KADOKAWA 中原 淳 小林 祐児『働くみんなの必須講義 転職学 人生が豊かになる科学的キャリア行動とは』より筆者が作成
会社の不満だけでは、3割しか転職をしません。なので、魅力的な転職先を見つることで見切りをつけることができます。
とはいえ、焦って転職先を決めても、同じことを繰り返すリスクがあります。この記事で転職先の見つけ方を参考にしてくださいね。
見切りをつける前にやるべきこと
自分の会社がV字回復する企業なのか考える
業績が低迷する時期は、どこの会社も必ず訪れます。しかし会社に価値があれば、V字回復することもありますし、他の企業からM&Aなどで救済される可能性もあります。
実際に売上が低迷してからV字回復した会社を3社取り上げて説明しますね。
- カルビー
- シャープ
- ニコン
これらの企業は、経営方針を変えて時代の変化に対応してきた企業です。では、どのように時代の変化に対応してきたのか実際に経営判断した実例を解説しますね。
【カルビー】
全国に工場を構え新鮮なポテトチップスを消費者に提供しているカルビーですが、パッケージ技術が向上するという時代の波で経営危機になりました。
1つの工場で新鮮な製品を全国に配送できることから、ライバル企業が多く参入してきたのです。そこで、カルビーは工場の稼働率を上げて、他社よりポテトチップスの価格を下げたのです。
カルビーは、全国に設備投資をしていたの強みを活かし、V字回復をしました。
参考文献 : 東洋経済オンライン
【シャープ】
日本の大手家電のシャープですが、コストが安いサムスンの半導体にシェアを奪われ5,000億円の赤字になりました。4年間で6,000人の希望退職を集め事業を縮小しました。
そこで、電子機器の世界大手である香港のホンハイと業務提携を結びます。早速、社長以外の管理職を廃止したりするなど約200人の人事にメスを入れ倒産の危機を逃れました。
【ニコン】
2010年デジカメが主流だった時代から、スマホのカメラ性能が向上しデジカメは売れなくなった。そこでニコンは、ミラーレスの市場が伸びると予測し2021年に発売した最高級のカメラは、生産が追いつかないほど売れています。
今回紹介した企業が大手だから生き残れたのではありません。大企業になると経営判断が難しく、間違った選択をしてしまうと一気に倒産してしまうからです。
会社の規模に関係なく生き残る会社は、「変化に対応するための判断材料を多く集め、時代の流れに合わせ自社の強みを活かせること」です。
将来の予測は誰にもわかりませんが、自社の強みを理解していて、変化に対応する柔軟性があるのかが見切りをつけた方がいい会社の判断材料になります。
転職活動を始める
上記でお伝えしたとおり、見切りをつけた方がいい会社でも変化に対応できる企業であればV字回復する可能性があります。
しかし変化できない企業の方が多いので、変化に対応できそうにない会社であれば転職活動を始めていきましょう。
いますぐに転職しなくても、企業からのオファーの数で自分の市場価値を確かめることができます。下記の記事から転職エージェントに登録して、自分の市場価値を確認しましょう。
退職理由を考える
退職理由は人それぞれ違いますが、だいたい職場への不満が多いようです。これに関してCreate転職さんが、500人にアンケートを実施しています。
とはいえ、この不満を上司にぶつけて辞められないですよね。
これに関してINOUZ Timesさんが、男女100人にアンケートを実施しています。
参照 : INOUZ Times 「退職理由は嘘が多い」のが当たり前?)
このことから、不満だらけで退職するけど、ホンネは言わない人が多いようです。
実際私も4回退職してきましたが、ホンネで言ったことは体調不良で退職した1度だけです。あとは、家業継承(実家を引き継ぐ)のためとか、キャリアアップのためとかウソをついて退職していました。
意外とホンネで言う人が、4割もいるんですね。
周りからもアドバイスもらって、色々考えた結果、内定貰ったところに行くことにした!!明日退職のこと伝える😭退職理由は本当のこと話すべきなのか悩む、、
— とろろご飯 (@KE0JFk17nT45cWe) August 2, 2021
続いて、ホンネや建前でも上司が納得すれば、円満退社となります。そこで、またCreate転職さんのアンケート結果をみてみましょう。
8割以上の上司が、部下の退職理由に納得しています。約4割のホンネで退職した人も、納得するようです。
嘘が苦手な人は、ホンネで退職理由を言った方が自分もスッキリするかもしれませんね。しかし今回は、自己都合退職トラブルを避けるために、ホンネで言いたい気持ちを抑えて、上司が納得する退職理由を厳選して紹介したいと思います。
退職理由が思いつかない方は下記の記事を参考にしてみてくださいね。
見切りをつけた方がいい会社【まとめ】
見切りをつけた方がいい会社の特徴は、以下の10個です。
- 労働時間が乱れている
- 職務環境が乱れている
- 優秀な人が辞めていく
- 人間関係が悪い
- 自社の強みと弱みがわからない
- 不正の前兆がある会社
- 不正しそうな人がいる会社
- 仕事へのプレッシャーが多い
業績が黒字でも倒産する企業が多いので、業績だけで会社を見極めないで、これらの特徴を参考にしてみてくださいね。この特徴に当てはまった方は、転職活動をの準備をしてください。
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